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 FRM BOOSTに引き続き、「BAJA本第2弾」となる「Land,sea,deserts and Skies of Baja California」の予約販売を開始しました。おかげさまで現在150部程度のご予約を頂いており、このままいけば無事予定期間に皆様にお届けできそうです。前作「DESERT RIDE AND DAYS IN BAJA」もおかげさまで5000部ほど販売させていただきましたが、その部数に至るまでには7年間近い時間が必要でした。

 弊社でこうした予約販売方式を今年薦めているのは、弊社作成のコンテンツだけではなく、将来的に「超ニッチだけど絶対読みたい」といったコンテンツの提供を行える仕組みを作りたいと思っているからです。では、なぜ予約販売方式だと、それが可能になるのか。その考え方を今日は書きたいと思います。バイクには直接関係のない話ですが、おそらくこのウエブを読んで頂いている方は雑誌も好きな方でしょうから、宜しければお付き合いいただければ幸いです。

 さて、1990年代くらいまでは雑誌業界というのは、健全な「文化事業」だったと思います。世の中を刺激したい。新しいものを紹介したい。美しいものを見て欲しい。あるいは、こんなに悪いことがあるということを暴露したい。
 崇高なテーマの雑誌から下世話なテーマの雑誌までいろんな雑誌がありますが、しかし多くの雑誌の根底にあるのは「大好きな、自分の得意とするテーマについて、プロとして自信の持てる内容を提供したい」という気持ちが全ての雑誌編集者、ライター、カメラマン、イラストレーターにあったと思います。もちろん、発行者も。

 もちろん、多くの雑誌でその気持ちは今も変わっていないと思います。しかし、変わったのは雑誌を取り巻く環境です。一言で言って、儲からない商売になったのです。1980年代、とあるバイク雑誌の編集長も務めた先輩が「あの頃は札(紙幣)を刷っているようなものだった」と言っていました。そう、刷れば刷るだけ売れるので、印刷部数を増やすということは、それだけ利益を拡大することに直結していたのです。
 だから、一定以上の安定した部数をもつ雑誌では、さほど収支を気にせずに記事を制作できていたのです。テーマによっては売上げが落ち込んだり、あるいは増えたりすることもありましたが、それでも「これを見せたい」「これをやりたい」といったことに集中できていました。当時、確実に売れていたのは年に1回の通称「カタログ号」でしたが、だからと言ってそれを年に何回もやるのはダメだという、ある意味で編集者の矜恃というものをもっていたと思います。カタログは確かに便利だし売れるし、ビギナーに訴求する。しかし、有る程度以上のベテランにはどうだろう? という考えがあったからです。

 しかし、バイクの売上げが減少し、それにともなって雑誌の売上げも減少していくに従って、企画の立て方が変わりました。なるべく多くの人に買ってもらえる企画を、しかも安い経費で。そんな方向に変わっていきました。これはバイク雑誌に限らず、多くの雑誌について言えることだと思います。いや、雑誌や書籍に限った話ではなく、CDなども含めた「出版業」全体のトレンドだと思います。
 なんでそうなったか。つまりは余裕がなくなったからです。

 では、多くの人に読んでもらえる、買ってもらえる雑誌とはどんなものか。趣味の雑誌に限って言えば、それは「エントリー向け」に徹するということです。趣味の雑誌をいちばん多く買うのは、今からその趣味を始めようとする人たちです。だから、初心者向きのハウツーや、あるいは新製品紹介をメインにおいた記事展開を重視するようになります。また、柳の下のどじょう方式も多用するようになりました。先に書いたカタログ号もそうだし、北海道特集が売れるとなれば、毎年北海道特集をやる。そんな感じです。

 でも、マーケティングの専門家でもない雑誌屋が、「これは売れるだろう」なんて考えてもそうそうあたらないものです。当たるときもあるけど、二回目以降は初回よりも反響が悪化していくのが普通です。

 こうした流れの結果どうなったか。いいことは1つあります。それは、ジャンルに合わせた専門誌が多数生まれたこと。僕が高校生の頃はバイク雑誌なんて数誌しかなく、オフロードが好きでも、いざ雑誌を買ってみたらほとんどがオンロードの記事でオフロードの記事はわずか、なんてことが多くありました。
 今では、オン、オフはもちろん、メーカー毎に雑誌がある状況だから、そうした不満は少ないでしょう。
 もちろん、そうした専門誌の登場によるデメリットもあります。それは、たった今、自分に興味のあるジャンル以外の情報に触れにくくなったことです。オンならオンだけ、オフならオフだけ。ツーリング雑誌だと、レースの情報は入らない。今興味のある情報以外に触れることがない。これは大きなマイナスだと思います。

 さておき、「売れる雑誌」にフォーカスするとどうなるか。例えば、弊社でよく扱っているBAJAやファラオラリー、マン島TTなどの記事は掲載しにくいということです。どれも世界的に見ればメジャーなレースでありフィールド、イベントではありますが、しかしこれから教習所に行って免許をとるようなライダーは、その記事にひっかかって買ってくれるとは思えない(僕はそうは思わないんですけどね)。

 なので、ツーリングなら北海道か伊豆、信州。雨の時期にはカッパ特集で、冬は露天風呂と防寒特集……となるわけです。もちろん、どの雑誌も綿密な取材を重ねていて、弊社ではとても出来ないような細かな取材をしていて素晴らしいと思います。しかし、ある程度ベテランのライダーが「ふむふむ」となるような記事は、それらに埋もれてしまう。これはじつに残念なことで、素晴らしい記事が載っていても、80%がビギナー向きに作られている雑誌の場合、すでに読者が手に取らなかったりするわけです。もったいないことですが。

 でも、極端にマニアックなテーマの雑誌というのは、とても大部数が出るとは思えないので、どうしても発行に至りにくい。少部数前提では単価も高くなってしまう。そうなるとどうなるか。発行に至らない……ということになるわけです。

 しかし、やはりマニアックな内容に関する情報を求める人たちというのはいるはずだし、そうした読者をインスパイアできる、素晴らしい世界を見せられるクリエイターたちも存在するはずです。ところが、そうした貴重な情報が、今の世界では世に出にくい状況になっているわけです。

 弊社で行っている予約販売方式は、そうした状況を打破したいと思って行っていることです。現在は弊社の作品ばかりですが、今後は素晴らしい素材を持っているクリエイターの方々にコンタクトして、マニアックだけど、それだけに貴重な内容をカタチにしていきたいと思っています。

 では、なぜ予約販売方式なのか。それは弊社もそうですが、資金的に余裕のないクリエイター、出版社は、こうした新しいことになかなかチャレンジできないのです。制作には当然日数もかかりますし、資金も必要になります。売れるかどうかなんて事前にはわかりません。売れたとしても、売れなかったとしても、なんで売れたのか、単価設定は正しかったのかなんてのは結果論でしかわからないのです。

 なので、信頼出来る書き手や、信頼できるカメラマン、イラストレーターなどの作品を、確実に彼らがペイできる環境を作って出版していきたい、そう思って始めたのがこの予約販売方式なのです。重ねて言いますが、現在は力不足で弊社のコンテンツのみですが、これから徐々に多様なクリエイターの作品を発売していく予定です。

 電子書籍ならコストもかからないし可能なのでは? と言うご意見もいただきますが、これまで取り組んできた経験から言うと、電子書籍は紙の値段と同じではほとんど売れません。また、出してみないと売れるかどうかわからない……という点で、従来の出版と基本的に変わらないのです。

 これらの課題をクリアできるのが、事前予約方式だと思っています。もちろん、危険もあります。予約して買ったものの、内容が期待していたものと違った……といったことになる可能性もあるわけです。しかし、そうした期待外れな著者やクリエイターは自然と淘汰されていくと思っていますし、内容に満足できない場合は返品できる仕組みも作っていきたいと思っています。

 たとえば、参戦経験豊富なラリーストが語るダカールラリー完走までのノウハウ。北海道のベスト無料キャンプ場ガイド。はたまた、都内のバイク駐輪場完全ガイドなんてのも需要があるかもしれません。今はそうしたノウハウ、知識を持っているクリエイターがいても、「売れるかどうかわらからないのに制作する時間なんてとれない」というのが実情だと思います。

 しかし、事前に制作に見合うギャラが確保できるならぜひやりたいという人もいるはずです。クリエイターにとってすでにもっている自分の知識やノウハウ、写真、イラストなどの作品は我が子のようなものであり、いずれ世に出したいとは思っているからです。

 なので、弊社では、今後もこの方策を追求し、刺激や知識を求める読者と、貴重な知識をもっているクリエイターとを繋げていきたいと思っております。ぜひこの方針をご理解いただき、ご協力いただければ幸いです。

株式会社RIDEpublication
代表取締役 三上勝久

P.S.そんなわけでBAJA本第二弾、よろしくです! 期待は裏切りません!

P.S.クリエイターの方からの企画ご提案、心からお待ちしております。書籍、ポスター、写真集などいろいろ考えられると思います。