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この丸太、ちなみに僕も楽に越えられました。こんなに恰好よくはないあけど(笑) ライダー:和泉拓

この丸太、ちなみに僕も楽に越えられました。こんなに恰好よくはないけど(笑) ライダー:和泉拓



PHOTO and text by Katsuhisa Mikami
Rider: Taku Izumi

エンデューロと日本メーカー

 僕ら自身が知っているように、日本は世界に冠たるバイクメーカーを4社ももつ国である。ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ。第二次世界大戦の焼け跡から立ち上がったこの新しい産業は、20年間ほどの短期間に世界を制してしまったのだから凄い。
 日本のバイクメーカーは、オフロードバイクの世界ではさらに早いスピードで世界を席巻してしまった。ヤマハが初めての本格的なオフロードモデル、DT-1を発売したのは1968年だったが、1971年にはスズキが世界選手権モトクロスを制し、1980年代にはすでにモトクロスコースにはほぼ日本車のみという状況になっていた。わずか20年弱の間に世界のトップに立ってしまったわけである。
 しかし、数あるモータースポーツのなかで、競技人口が多い割に未だにメーカーの取り組み方が弱いと思えるジャンルがある。それがエンデューロやクロスカントリーレースだ。
 世界選手権エンデューロにはもちろんホンダ車もヤマハ車も走っているが、いずれもファクトリー参戦ではなく、ヨーロッパのインポーターによるチームである。ヨーロッパ在住の某日本メーカー関係者にその理由を尋ねたところ「予算をかけてもそれほど売れ行きに繋がらない」と判断された結果そうなっている……とのことだが、その調査はいささか旧いのではないだろうか。なにしろ、エンデューロに本格的に取り組んでこなかった結果、今やオーストリアのKTMが「世界最大のオフロードバイクメーカー」と名乗るようになってしまったわけだから。
 誤解を招きたくないので書いておくと、僕は国粋主義者ではないし、どうしても日本のバイクメーカーに世界の頂点に立ってもらいたい、KTMではイヤだ、と言っているのではない。若者からそれこそ老人まで、すべてのアマチュアライダーがもっとも簡単に、もっとも長く楽しめるモータースポーツ(トライアルもそうだが)……エンデューロにも目を向け、そのための製品を出して欲しいとずっと思っているのだ。
 嬉しいことに、そう思っていたのは僕だけでなくもちろんメーカーの中にもいたわけで(当然だよね、バイクが大好きでバイクメーカーで働いているんだから)、じつに嬉しいモデルが発表・発売になった。それがYZ250FXだ。

内部構造はYZ250Fと全く同じだが、驚くほど扱いやすい優しさに仕上がったフロントサス

内部構造はYZ250Fと全く同じだが、驚くほど扱いやすい優しさに仕上がったフロントサス

新たなスタンダードに

 実際に走り出す前までは「モトクロッサーのセッティングを変えただけのハードなモデルなのでは……」という不安があったのだが、走り出してすぐに「これは本物のエンデューロマシンだ!」という喜びに変わった。
 ヤマハは大昔にYZ250WR(ワイドレシオ)というヘアスクランブルマシンを発売していたが、このマシンはじつにハードでモトクロッサーと変わらん、という乗り味だった。その想い出を感じつつ試乗したのだが、なにしろこのYZ250FX、モトクロッサーがベースとなっているとは思えないくらい優しく、乗りやすいのだ。もっともベースのYZ250Fもモトクロッサーの中で相当に乗りやすいマシンだが、FXはまったくそれとは違う優しさをもっている。
 まず、サスペンションの初期作動がじつに柔らかくクイックだ。ギャップや木の根にホイールが当たったときに、モトクロッサーだったら手にコンコンとフィードバックがありそうなところも、じつにしなやかに乗り越えさせてくれる。
 そしてさらに驚くのは、エンジンの極低速域での粘りだ。まるでリクルスが付いているんじゃないの? ってくらい、下でよく粘る。エンデューロで時々ある、アイドリング近辺のトルクで乗り越えたい……といったシーンで、しっかり期待に応えてくれるのだ。
 「ひとことで言っていいバイクですね。これまで250ccの4ストロークエンジン・エンデューロマシンはKTMの250EXC-Fが1つのスタンダードだと思っていたんですが、それを超えた感じです。パワフルなのに、こんなにマイルドに仕上がっているなんて……」とは、試乗した和泉拓(ストレンジモーターサイクル)の言葉。
 「ヤマハの気合いが感じられますよね。国産メーカーが本気で造るとここまで素晴らしいモノが出来るんだって思いました。サスもエンデューロにバッチリだし、これなら本当のビギナーから上級者まで誰もが楽しめるでしょう」。

ぜひ試乗してほしい!
 
 実際、僕が乗っても、大げさに言えばセローに乗っているかのように自信をもって振り回すことが出来る。細い。スリム。軽い。そして操作系のすべてが軽くレスポンシブなので、思いっきり開ける、思いっきりブレーキングする、セクションにトライする……すべてが楽しく感じられるのだ。
 YZ250Fからの大きな変更点はサスペンションセッティング、セルスターターの装着、リアホイールの18インチ化、サイドスタンド、アンダーガードの装着……といった程度にしか見えないが、じつは隅から隅までクロスカントリー/エンデューロに最適化されたモディファイがなされている。
 開発にはもちろん、JEC/JNCC両方のタイトルホルダーであり、ISDEライダーでもある鈴木健二が参加している。2013年のJECやJNCCには14のYZ250Fで参戦していたのは、このマシンを造るためだったのだ。
 メーカーが新しいマシンをリリースするのはもちろんビジネスのためだが、このマシンに乗っていると、ビジネスとは無関係に「この世界を盛り上げていこう」「この世界で喜んでもらえるものを造ろう」としたヤマハの関係者の顔が浮かんでくる。同じ思いで造られたWR450Fも素晴らしいバイクだが、やはり250ccのほうがより多くのライダーが乗りやすく思うのは当然。本当にこんな素晴らしいバイクを造ってくれてありがとう! って心から思う。

 そのヤマハ開発陣の気持ちをぜひ試乗して確かめてほしい。そして、その感想をぜひメーカーの人に伝えて欲しいと思う。そうしたハッピーが繋がっていけば、きっともっと多くのこうしたバイクが生まれてくるに違いないから!

※11月17日にこの記事を掲載すると本誌Vol.55に書きましたが、諸事情により掲載が遅れたことをお詫びします。

YZ250FX
価格:77万7600円(税込)
※予約期間:2015年2月28日まで
ヤマハのYZ250FXウエブサイトはこちらから

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